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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
べつにしたくも何もありはしない。
いつものまんまです。
汗と塵によごれて、ところどころ黄色くなった白の着物に、すりきれてしんが出ていようという博多の帯を貝の口に結んで、彼にとっては女房ッ子も同様な例の濡れ燕を、グイとおとし差し……。
ふところ手――といっても、片手ははじめからないのだから、左の手を袂のなかへ引っこめただけだ。たったひとつの眼で往来の人をジロジロにらみながら、
「どこの大名のでもいいや、壺の道中はねえかナ」
アア人が斬りたくてたまらねえやといわぬばかりの顔で、ブラブラ歩いてゆくのだから、旅人たちはみんな片側へよけて通る。そばへきて吠えつくのは、野良犬だけだ。
「おれのからだにゃア、生き血のにおいがするとみえる。フフフヤ、犬どもが吠えるワ吠えるワ。ヤイヤイ、もっと吠えろッ! もっと吠えねえかッ!」
幽霊のような姿で、宿はずれの辻堂に泊まったり、寺の縁の下に這いこんだり――すると、街道のむこうに見えてきたのが、宇治へのぼる途中のこの石川左近将監のお壺。
おおぜいの足が砂塵をまきあげて、一団になって練ってゆくのを、遠く後方からのぞんだ丹下左膳、