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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「ナニ? そうか。イヤそうだろうと思った。伊賀の暴れん坊とも言われるあの若君にかぎって、丹波などの奸計におちいるお方ではないのだ。それはめでたい、めでたい。すぐさまお迎えに!」

「そうだ、お迎えだ! お迎えだ!」

こうなると、知らせてくれた三方子村のお露は第一の殊勲者、伊賀侍の眼には、救いの女神とも映るので。

「婦人の身をもって、早朝から遠路まことに御苦労でござりました。サ、サ、まずおあがりなされて」

「コレ、大恩人じゃ。粗相があってはならぬぞ。お座蒲団を持て。誰かある、お茶を――」

「はッ、粗茶ながら、ひとつお口湿しを……」

と急に、下へもおかぬもてなし。

何が何だかわからないお露、手を取らんばかりに引き上げられて、床の間の前の上座へすわらせられてしまった。

きっと騒動が持ち上がるに相違ないと、それを楽しみに、駈け込み訴えのように飛んで来たのに、その目算はガラリはずれて、一同は涙ぐむほどの感謝ぶりだ。

「では、さっそく貴殿方へ出向いて、源三郎様と萩乃さまをこちらへお迎え申す。殿がお帰りになれば、またお言葉も下がるであろうから、お露どのと申したナ、なにとぞ貴殿は、それまでこちらにごゆるりと御休息あって――」