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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

これはもう、トンガリ長屋の作爺さんではない……当代に名だたる名木彫家作阿弥の、芸術心に燃える姿。

「さよう――だが、お話の開山上人の薬師仏は、二荒山の桂の大樹を、立ち木ながらに手刻したものではござらぬ。のちに歌ヶ浜においてその同じ桂の余木をもちいて彫らせられたのが、くだんの薬師の尊像じゃとうけたまわっておる。ハイ、まことに古今の妙作」

泰軒先生が無言のまま、深くうなずいた。田丸主水正はお株を取られたかたちで、だまっている。

チョビ安とお美夜ちゃんは、常と違う作爺さんの態度に、いったい何事かと、あっけにとられて見まもるばかり。

「日光には、たしか弘法大師御作の不動尊の御木像も、あるはずじゃが、あれは、寂光寺の宝物でござったかナ?」

「は」

主水正は、かしこまって、

「そのほか、慈眼大師の銅製誕生仏、釈尊苦行のお木像、同じく入涅槃像、いずれも、稀代の名作にござりまする」

「うけたまわっております。命のあるうち、ひと眼拝観したいものじゃと、作阿弥一生の願いであったお品々じゃ」

「サ、それらをしたしく御覧になれようというもの。そのうえ、腕にまかせて神馬をお彫りなされば、それらの名品と肩をならべて、世々生々伝わりまするぞ、作阿弥殿……サおむかえの駕籠が、まいっております」