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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

鳶由は、つんつるてんの襦袢一まいのまま。

そのほか、灰買いの三吉。

でろりん祭文の半公。

傘はりの南部浪人、細野殿。

寝間着の若い衆、寝ぼけ眼のおかみさん、おどろいた犬、猫まで飛び出して、長屋はにわかに非常時風景だ。

寝入りばなを石金の濁声に起こされて、一同、何が何やらわからない。

「相手は誰だ、相手はッ?」

「なんだい、お前さん、そんな薪ざっぽうなどを持ってサ」

「や! 喧嘩じゃあねえのか」

「半鐘が鳴らねえじゃねえか。火事はどこだ」

「いや、火事でもない。喧嘩でもない」

長屋の入口につっ立った石金は路地を埋める人々へ向かって、大声に、

「オウ、おめえら、このごろすこしでも、この長屋が住みよくなり、また、困ったことがありゃア、持ち込んで行けると思って安心していられるのは、いったいどなたのおかげだか、わかってるだろうな」

路地いっぱいの長屋の連中、ガヤガヤして、

「泰軒先生だ」

と、いう鳶由の声についで、

「そのとおり! 泰軒先生は、おれたちの恩人だ」

「泰軒先生あっての、トンガリ長屋だ」

みな大声にわめく。

「そこでだ――」

群衆へ向かって話しかける石金の足もとへ、心きいた誰かが、横合いの芥箱を引きずり出してきて、