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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

額を青くしている早苗を、丹波はうるさそうに見やって、

「大事ない。おっつけ御帰館になろう」

「でも、この真夜中にお供もお連れにならず、いったいどちらへ?」

「それは、わしにはわからぬ。なんだかこの二、三日、ひどくしょげ返っておられたよ。あの年ごろの婦人は、ふっと無情を感ずることがあるものだからな……」

丹波もさびしそうな顔をしたが、気がついたように、大声に、

「いずれにしても、婢どもの知ったことではない。こちらはお蓮様どころではないのだ。お末の者一同、さわがずと早く寝めと申せ」

「さようでございますか、それでは――」

と、早苗は、あたふたとさがって行く。

あとは、車座になって一同が、不安げな顔を見合わせて、

「どうしたのだろう、お蓮様は」

「何から何まで、意のごとくならんので、ヒステリイを起こしたのでは……。」

ヒステリイなどと、そんな便利な言葉は、その当時はまだなかった。女の言ったりしたりすることで、男のつごうが悪いと、世の良人諸君はみんなヒステリイで片づけてしまう。これは、余談。

「生きている源三郎を見て、心境に大変化をきたしたのかもしれぬテ……オヤ! なんだ、今の音は」