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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「別間へ通しておけ」

そして、正面の信濃守へ向かって、

「私用で使いの者がまいったようじゃ。失礼ながら座をはずしまする。暫時お待ちのほどを」

起きあがって、一間の広いお畳廊下へ出た。

ところどころに置いた雪洞に、釘かくしが映えて、長いお廊下は、ずっとむこうまで一眼です。

小姓に案内された玄心斎が、そのとき、すこし離れた小間へ通されるのが見えた。

無造作な対馬守は、スタスタと大股に歩いていって、安積老人のすぐあとから、その部屋へはいった。

うしろ手にふすまをしめながら、立ったままで、

「なんじゃ。用というのを早く申せ」

それへ手をついた玄心斎、雪のような白髪の頭を低めて、

「殿には、いつに変わらず御健勝の体を拝し……」

「挨拶などいらぬ。なんの用でまいったと言うに」

「またただいまは、御用談中を――」

「客を待たしてあるのじゃ。源三郎から、何を申してまいったのだ」

「殿と、司馬十方斎殿とのあいだに、源三郎様と萩乃様との御婚儀のこと、かたきお約束なりたちましたについて、てまえはじめ家来どもあまた、源三郎様にお供申し上げて、正式にこの江戸の道場にのりこみましたにかかわらず――」