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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

もう、やむをえません。

こうなると、さすがは峰丹波。スッパリと覚悟ができてしまった。あばれるだけあばれたうえで、機を見て逃げ出すだけのことだ!

たち上がった丹波、ふるえる手で袴のももだちを取りながら、白足袋のまま、明るい光のみなぎる庭へ下り立った。

肩をそびやかし、左手にさげた愛刀の鯉口を切って、足ばやに庭の隅へ――。

眼くばせした門弟達は、まるでお葬式に列するようにうちうなだれてゾロゾロつづく。

もと弓場のあったあとです。そこだけ立ち木がひらいて、地面にはバラッと砂がまいてある。

濃い影を土に落として、むこうの隅にガヤガヤたち騒いでいる伊賀の連中の中から、着流しに懐手をした源三郎が、例の蒼白い顔をゆがめて笑いながら、出て来ました。

「ながらく失礼つかまつった。今朝はまたこの真剣勝負、さっそく御承引あってかたじけない」

皮肉な挨拶。

だが、峰丹波は、それに言葉を返すより、何よりも気になってならないのは、この源三郎よりも腕達者だという今日の判定役。

「お立ちあいは、どなたで――?」

と、そこらの人々へ眼を走らせた。

猫と鼠

一

「うむ、その儀は――」

と源三郎が、いつになくつつましやかな真顔で、ツと身を避けると……。