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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
「は、発狂されたか! ワ、わしは相手ではない。わ、若君、ゲゲ、源三郎様が、貴殿の敵ではないか」
そのあわてぶりが、よほどおかしかったと見えて、人の悪い源三郎は、刀を引いてゲラゲラ笑いだしてしまった。
これが唯一の逃げ路と、丹波は一生懸命、
「偽物ッ! からくりは見抜いたぞ!」
叫びながら、釣瓶落しをまっこうに振りかざして、なおも主水正目ざしてとびこもうとする。
「柳生対馬守に、この丹波の刀が受け止められぬはずはない。失礼ながら打ちこみますぞ、対馬守様!」
大声に叫びながら、丹波は一心に主水正へ斬ってかかる。
「待った! 待った! とんだ気ばやの御仁じゃ。わしは、ただ、殿の言いつけでまいっただけで、近ごろもって迷惑至極!」
周章狼狽をきわめた主水正は、立ち木の幹を小楯にとって、
「コレ、人違いじゃというに、わしは対馬守様ではござらぬ。家老の田丸――」
丹波はこれで、一時のがれに命を拾おうという気だから、
「田丸もたまらんもあるものか。サア、判定役の手腕から先に、見参いたしたい」
「もし! 源三郎様ッ! 笑ってばかりいずと、この無法者を、お取りおさえください」
立ち木を中に、二、三度堂々めぐりをして、猫と鼠のように追いつ追われつしていた主水正は、機を見ていっさんに裏木戸から、外の妻恋坂の通りへ抜け出してしまった。