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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

と、この、人情の機微をうがちつくした泰軒居士の言葉が、この際お蓮様にとっては、わずかのたよりになるのでした。

それにつけても。

なんという変わりようでございましょう。

まるで別人。

ここらの長屋のおかみさんといってもいいような、つっかぶりようで、引っつめの髪は横ちょに曲がり、真岡木綿のゆかたの襟に、世話ぶりに手拭をかけて、お尻のところにずっこけそうに、帯を結んだ姿。これを道場の連中に見せたら、なんというでしょう。

貝細工のようだった指も、今は水仕事にあらくれて、

「サアサア、どうぞ。ええええ、先生は奥に――」

と、ちょっと家内を振りかえり、

「奥と言ってもひとまたぎなんですが、おや、また先生は大の字に引っくりかえっておいでですよ。アノ、泰軒先生、屋根屋の銅義さんという人がお見えですよ」

と取りつがれた銅義は、

「ぴらごめんねえ。あっしゃア、先生様にさばいてもらって、かかあのちくしょうを追ん出そうと思いやしてね」

ズカズカあがりこんで、泰軒居士の前にピタリと膝を並べた。

例によって、巷の身の上相談なので。

このトンガリ長屋は、泰軒先生の徳風にすっかり感化されて、今ではトンガリ長屋とは名のみ、ニコニコ長屋になってしまって、江戸名物がひとつ減ったわけだが。