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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
誰にことわって、ここへはいってこられた!」
それは、相手が誰かということも忘れたらしい、芸術心のほか何ものもない、阿修羅のようなものすごい形相であった。
「最後の鑿を打つまでは、人に見せぬというのが、わしの心願じゃ。この山奥へこもっておるのもそのため。ごぞんじであろう」
この剣幕に、対馬守もたじたじとして、
「いや、其方をわずらわしたその馬像を、どこへすえるか、場所が決まったによって、ついては、もうどのくらいできたか、ちょっと見とうなってナ、つい……」
主水正が、前へ出て、
「コレコレ! 作阿弥どの。言葉が過ぎようぞ。芸熱心はよいが、殿のおん前もわきまえず、あまり仕事に凝って、乱心でもされたか」
「どこへ置こうと、そんなことはわしの知ったことではない。早々出て行ってもらいたい」
「イヤ、許せ、許せ」
対馬守は、かえってその一本気の工匠気質に、おもしろそうに眼を細めて、
「護摩堂の守護として、長くあの前へ飾りおくことに決めたぞ、作阿弥」
殿のお言葉を、主水正が受けついで、
「作阿弥どの。これには深いわけのあることなのじゃ。どういうものか、いつの御造営にも、あの護摩堂の壁がいちばん先にいたんで、たちまち落ちてならぬ。