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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

そのお梶が、この二、三日、急に、めっきりふさぎこんでいるのは、

「こんなかあいいお美夜ちゃんと、お蓮様を、人柱などにして、生きながら壁のなかへ封じ込めてしまわなければならないのか――!」

と、親しみがますにつれ、あわれも深まったというのは、これは人情でそうあるべきところ。

この人柱のことは、いくら極秘にしても、微風のようなささやきが、造営奉行所をとりまくお作事部屋に、つぎからつぎと伝わって、諸職人のあいだには、もう誰知らぬ者もない。

この唖のお梶さえ、兄の手真似をりっぱに判断して、ちゃんと知っているくらい。

口のきけない者だから、秘密のもれる恐れは断じてなかろう……というので、選ばれてこの母娘の世話をすることになったのだが。

片輪だけに情が深く、やさしくされればひと一倍、恩にむくいたいという心のわくことには、係役人は気がつかなかったとみえる。

はじめお蓮様は、ションボリうなだれてばかりいるお梶を変に思って、頭を指さして顔をしかめてみせたり、お腹をかかえてうなるやら、いろいろやってきいてみたけれど。

いいえ! というように、首を振るばかり――頭痛でも腹痛でも、病気でもないという。