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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
という肚。
品川宿から江戸入りした左膳は一直線に八百八町を横ぎろうと、今しさしかかったのが、この上野山下の三枚橋です。
ちょうど真夜中のこと。
お山の森のうえに、うすぼんやりとした月がかかって、あたりにただよう墨絵のような夜の明かり。
両側の商家は、ドッシリと大戸をおろし、天水桶に大書した水という字が、しろじろと見えるそばに、犬が丸くなって寝ている。
何か事ありげな晩だった。
「ヤヤッ! この深夜に駕籠が……」
いま、三枚橋に片足かけた左膳の一眼に、ぽつりと映ったのは、正面、上野の山をおりてこっちへやってくる一丁のお駕籠です。
四、五人の高股だちの侍が、前後を警備し、なんとなく世をはばかる風情が見える。
真っ先に立ってくる提灯の紋――!
見おぼえがある。あれは確かに、柳生家の……。
駕籠というと、ただちに壺を連想するのが、このごろの左膳だ。
「茶壺の駕籠ではあるめえか」
そう思った。
小みぞのそばに、柳の垂れ枝。そのかげに身をひそめた左膳が、近づく駕籠を半暗にすかして見ると――蝋色鋲打ちの身分ある女乗物。
と! 闇に氷の光一閃。同時に、駕籠わきの一人が、ウウム! と肩口をおさえてよろめいたとき、