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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
また会おうぜ」
皮肉に口尻を曲げて言いはなった左膳、足早に歩きだした。
櫛巻お藤には、相変わらずそっけない左膳でした。
「マア、お前さんのように、情の剛い人があるかしら――わたしゃこうしていやな芝居をつとめる気で、こんな窮屈な思いをしながら、一日半時だってお前さんのことを忘れたことはないのに、ヒョッコリ会ったと思ったら、もうすぐ、ろくすっぽ話も聞かずに、そうやって行ってしまおうとするなんて!」
と櫛巻の姐御、姐御の本領を発揮して、いきなり、縫い取りの美しいうちかけをぬぎすてるが早いか、パッと地面へ投げすてた。
「よし! あたしも櫛巻と言われた女だ。こうなりゃあ意地ずく! どこまでだってついていってやるから!」
と、長い裾をグイとはしょると、夜目にも白い脛がくっきりと。
見ると、左膳はもう四、五間さきを、何事もなかったように歩いてゆく。
「オット! いけない、子供たちを忘れちゃあ……」
つぶやいたお藤姐御は、駕籠へ引っかえし、中へ手を入れてごそごそやっていたが、取りだしたのは角ばった風呂敷包み。折り畳の三味線と、塗り箱に入った尺取虫と――商売もの。
これだけは一刻も、そばを離さず、こうして外出にも、駕籠へ入れて持ち歩いているものとみえる。