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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

人ふたり斬り殺された真夜中のさわぎ。両側の家々では、細目に板戸をあけて、おっかなびっくりのぞいているし、番太戸の注進で、町役人たちもおいおいと出て来るようす。

かかり合いになって、この場をはずせなくなってはたまらないと、源三郎は二人の死傷者の始末に、上屋敷の者をその場へ残し、サッと風のように浅草の方角をさしてかけだしました。

その、おなじみの浅草竜泉寺のトンガリ長屋。

作爺さんの家では……。

名を秘め、世を忍んで、お美夜ちゃんとたった二人、ながらくただの作爺さんで日を送ってきた作阿弥が、柳生対馬守によって日光御造営へ召し出されたあと。

すぐそのあとを追って、お美夜ちゃんが母親のお蓮様とともに、これも日光へ発足してしまう。

あとには――。

大小二人の変物が、妙ちきりんな生活をこの家に送っている……蒲生泰軒とチョビ安兄哥と。

味気ない思いのチョビ安です。顔を見たこともない父母が、恋しいばっかりに、あの「むこうの辻のお地蔵さん」の唄をうたって、親を探しに江戸へ出てきたのですが。

伊賀の柳生の者とだけ、いまだにその親にはめぐり会えず、かりに父ときめた丹下左膳とも離ればなれになり、親がわりのように世話をしてくれた作爺さんは、日光へ取られる。