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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「この長屋に、以前チョビ安という者がおったはずじゃが」

「ヘエ、安公なら、今夜宵の口に、なんでも父親が見つかったとかで、日光をさして旅に出やした、ヘエ」

「ナニ、日光へ?」

と聞いた丹下左膳、お藤を連れて、これもそのままチョビ安のあとを追い、すぐその足で日光へ向かうことになったが……。

と、それから数刻ののち、左膳のあとをたずねて、このトンガリ長屋へ来た柳生源三郎、その御浪人ならちょっとここへ寄って、ただちに日光へ出むいたという石金の言葉に、彼源三郎も、その場からただちに、日光へ、日光へ。

五

ほのぼの明けに江戸を出はずれた、蒲生泰軒とチョビ安の二人。

すこし遅れて、丹下左膳櫛巻お藤。

お藤はもう、どこかで懐中のお鳥目をはらって、旅のしたくをととのえたとみえ、椎茸髱もぎっとつッくずして、柄に合った世話な櫛巻。お端折りをした襟つきの合羽姿が、道行く人を振りかえらせるほどの仇な年増ッぷりでした。

遅れてトンガリ長屋へたどりつき、やはり石屋の金さんから、丹下左膳らしい浪人者が、さっき長屋へたずねてきたが、人を追ってすぐ日光へ出かけたと聞いた伊賀の暴れん坊、気の早いほうでは、人後に落ちません。