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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「いつぞやおあずかりのままの真剣勝負だ。貴公よりもおれよりも、剣腕の上の者が、判定に立ちあうのでなければ勝負はせんと、言いはったが、いまここへ、丹下左膳というあつらえむきの立会人が出て来たからな」

「おのれッ!」

刻々に細る息であえぎながら、丹波の指先は虫のようにおののいて、いたずらに帯刀の柄をはうが、もう抜く気力もないところを!

「…………」

無声の声、無音の音。恐ろしい気合いで、源三郎の振りおろした二の太刀に。

あわれ丹波! 胴首ところを二つにして、街道の砂塵にまみれた血糊の首が、ガッと小石を噛んだ。秋草に飛ぶ赤黒い血。

「とは言うものの――」

と伊賀の暴れん坊は、大あくびをかみしめながら、さし出した血刀を部下の一人に、懐紙一帖ですっとぬぐわせつつ、

「その丹下左膳が、おれより上の腕とは、まだきまらぬテ。まず伯仲であろうとは思うが、いずれその決着も、つく折りがあろう、ウフフフフ」

「くだらぬ者を斬ったな。それよりゃア畑の大根でも切るほうが、ましだろう。日光へか」

「ウム、兄貴が行っておるでなア。貴様はまた何しに日光へ」

問われた左膳の一眼は、忘れようとしても忘れることのできない、美しい顔が、そこににっこり立っているのを認めて、萩乃へ眼で挨拶。