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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

いつのまにか、浅黄色の宵闇がしのびよっていた。こころきいた者の点じた蝋燭の灯が、大勢の影法師をユラユラと壁にもつれさせる。

皆の心がシーンとなると、とたんに、言いあわせたように胸に浮かんでくるのは、あの、自分らが誤って斬り殺し、それを焼け跡へ放置して、源三郎と見せかけた仲間の死骸。

かたわらにころがしておいたのは、名もない茶壺で、ほんとうのこけ猿の茶壺は、とうに峰丹波の手におさめ、本郷の屋敷に安置してある……。

と思うから、丹波は上機嫌だが、その壺が早くもあの門之丞によって盗み出され、又その門之丞が斬りたおされて、壺はすでに左膳のもとへ――。

その左膳の手へうつった壺もお藤姐御のために、通りすがりの屑屋へおはらいものになって。

今は?

どこにあるかわからない。

……とは、峰丹波、知らなかった。

計略が図に当たって、源三郎を罠へ落としこんだのみならず、何かと邪魔になる丹下左膳まで、飛んで火に入る夏の虫、自分から御丁寧にも、その穴へ飛びこんでくれたのだから、これこそほんとうに一網打尽である。

このうえは。

深夜までここにじっとしていて世間の寝しずまるのを待ち、一同で手早く、地面から地下へ通ずるあの三尺ほどの竪坑を埋めてしまえばいい。