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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「何をいう。壺に封じこめる――つまり、壺の中に決まっておるではないか」

「それが、ソノ、なんども申すとおり、はいっておりませんので」

「それならば、はじめからないのであろう」

「サ、そこです。とそう、私も考えましたが、いま一度お考え願えませんでしょうか」

「ウム、わかった! ハハハハハ、わかったぞ」

眼をかがやかした吉宗公は、力をこめて小膝を打ちながら、

「二重底だな?」

越前守と愚楽老人は、チラと眼を見かわす。

沈黙におちると、もう夜のふけわたったことが、錐で耳を刺すように、しんしんと感じられます。おそば御用、近侍の者たち、ことごとく遠ざけられて、今この御寝の間に額を集めているのは、八代将軍吉宗様を中に、天下ごめんの垢すり旗本愚楽さんと、今をときめく南のお奉行大岡忠相の三人のみ。

黒地金蒔絵のお燭台の灯が、三つの影法師をひとつに集めて、大きく黒く、畳から壁へかけてゆれ倒している。

一町奉行が、いかに重大な事件だからといって、夜間将軍と膝をつきあわせて話すということなどは絶対にない……ナンテことは言いッこなし。物には例外というものがある。これがその、最も意外な例外の場合のひとつなので……正史には出ておりませんけど、このときの三人の真剣さは、じっさいたいへんなものでございました。