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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

「おろせ!」

大之進の命令に、一人が、おっかなびっくり背のびをして、そっと壺を、松の根方の芝へ取りおろしました。

「誰かその蓋をあけてみろ」

こんどは一同尻ごみして、誰も手をかける者がない。

「スーッと一筋、怪しの煙が立ち昇ったかと見るまに、空中に、変怪の形をとって、うらめしや伊賀ざむらい……ナンテことになるんじゃないかな」

「世相険悪じゃから、爆弾でも入っているのかもしれぬ」

そんなことを言うやつはありません。

中に勇敢なひとりが、芝生に片膝ついて、壺の蓋をとりにかかった。

「御油断めさるな、おのおの方!」

誰かが、大時代の叫びをあげた。同時に、皆はパッと足を開き、腰の一刀の柄に手をかけて、居合の構え――これには何者かの深い魂胆があるに相違ないと思うから、ビックリ箱をあけるような緊張だ。

最初五分ほど、そっと蓋をずらして、中をのぞいてみたが、べつに煙も出なければ格別あやしい仕掛けもなさそうなので、また一寸ほど蓋を持ちあげてようすをうかがった。それでも、なんのこともないので、安心してぐっと中をのぞき、

「オヤ! 何もはいっていない……」

「ハテナ、空の壺を、こうして曰くありげに当屋敷へ届けたとは――悪戯にしては、あまりにも埒もない。