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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
どうやらおぼえのある地図――その下に、一行の文字が走っていて、武蔵国江戸麻布林念寺前柳生藩上屋敷。
オヤ! 主水正、大声をあげた。見おぼえがあるわけで、いま現に自分の住んでいる屋敷の図面ではないか。庭の隅の築山のかげのところに、×の印がついているのは、財産はここに埋ずめてあるというのであろう。主水正と大之進は、顔を見合わせた。双方唾をのみこむだけで、いつまでもだまっている。
やっとのことで、大之進が、
「御家老、このお上屋敷は、御当家御初代の時代から、ずっとここにお住まいになっていたのでございましょうか」
主水正は答えません。じっと考えこんでいるうちに、はじめて彼は、思い当たった。
「これは、真のこけ猿ではないのだ」
「えッ? 本物ではない……だが御家老、こうして古い書きつけまで現われ、埋ずめてある場所も、わかったではございませんか。しかも、この屋敷の庭の隅と――」
「大之進、至急したくをしてくれ。お城へあがって……そうじゃ、愚楽様にお目にかかるのじゃ」
十
それから一刻、二時間ののちに。
千代田城の一室で、膝を突きあわせんばかりに対座しているのは愚楽老人と、柳生藩の江戸家老田丸主水正の二人。