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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
愚楽さんは静かに説きすすめて、
「しかるに、こけ猿に意外の邪魔がはいり、真偽いずれともしれぬ壺が、いくつとなく現われた」
「ハッ、その儀は、手前ども柳生藩の者一同、実にどうも、近ごろ迷惑しごくのことに存じおりまするしだいで」
「イヤ、そうであろう。黄金のうずたかきところ、醜きまでにあらわな我欲迷執の集まることは、古今その軌を一つにする。上様におかせられても、お手前らの困憊がお耳に達し、なんとかして公儀の手をもって真のこけ猿を発見してやりたいものじゃと、わしにお言葉が下がったので、届かぬながらもこの愚楽が、大岡越前守殿と相談のうえ、ある巷の侠豪……その者の名は言えぬが――に頼んでナ、ひたすら捜索してもらったのじゃ」
「ありがたき御芳志、手前主人にもなれなく取りつぎまする考え、いかに感佩いたしますことか……」
「ところで、貴殿にうかがうが、いったい柳生のこけ猿と申すは、いくつあるのかな?」
「ハ?」
と、ふしぎそうな顔を上げた主水正、
「いくつと申して――むろんそれは、一つにきまっております。他はすべて贋物」
「サア、それはわかっておるが、その贋のこけ猿が、二つ三つ御藩の手もとにも昔から伝わっておるのではないかな?」