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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

密偵か?

強請か?

――天城の悪四郎とかいって、近ごろ寺院ばかり襲い廻る強盗の群があると聞くが、そんな者の手下でもあるか?

光厳には、いろいろに取られたが、そんなふうでもないらしいのは、相手の次のことばだった。

「まあ、おかけなさい。奥州かよいの生命知らずが、がらにもないとお笑いでしょうが、てまえにも人間なみの悩みはあるんで。――ひとつ善智識のお悟しをうけたら胸のもやもやが、いっぺんに解決してしまいはせぬかと、実あ、河原から後を慕って来たわけです。われわれ凡夫の煩悩を救ってくれるのは、あなた方のお勤めと思いますが」

「……?」

「聞いてくれますか」

「云ってごらんなさい」

――しかし光厳の返辞は、沙門らしくもなく、声に針をふいていた。その眉間はすこしも開かず、その体は硬直したままだった。

「――辺りに人もいないお山ですから、開けッ放しに申します。実は、てまえの迷っている悩みというのは、どうしたら今よりもっと大きく儲かるかっていう事なんで。――お蔑みなすっちゃ困りますよ。断っておきますが、てまえは武士じゃございません。根こそぎからの商人です」

「…………」

「坊さんが法の道に。