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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

「箭道に立つな。上流へ寄れ。一様に各※(二の字点、1-2-22)駒の列を、もそっと、上流へ並べ立てい」

義経は、馬上から指揮に声をからしていた。われこそ一番にと、流れを前に、河原へむらがり立った各部隊の騎馬武者たちは、ひとしく鐙からのび上がって、彼の高く振る手を横にながめた。

「上流へ寄れ」

「もそっと寄れ」

千余騎の横列は、馬首をそろえたまま、順に横へ横へ押しあった。そして約半町ほど陣列が移ると、

「それっ、押渡れ」

と、各隊の将が、義経の手を遠く見て、一斉に令を下した。

ざんぶと、一列にしぶきが上がった。

大きなうねりの波が河面を岸から拡げてゆく。味方の鐙と鐙、鎧の袖と袖とが揉み合い、もつれ合い、真っ黒に、激流を埋めて行った。

「――今だ!」

平等院の小島ヶ崎から、一騎、鞭を打って駈けて来た侍があった。

するとまた、一方の森陰からも、征矢のごとく河原へ向って駈け出した一騎がある。

二騎は近づいて、駒足をそろえた。そして、顔を見あわせた。

「やあ、梶原どのか」

「オオ、佐々木どのよな」

さすがに、今日のみは、にこと笑みあう余裕も持たない。

景季は、ひそかに、