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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

……頼朝の首をだ……」

三

清盛の死は、さすがに日本中を震駭させた。

よく云う人々も、悪くいう人々も、共々に、大きな感慨に打たれて、

人間。

それを考えさせられた。

鎌倉の海には夏が来た。

河口には、奥州船も、京船も、西国船もついていた。建設まだ半年というのに、ここから陸揚げされた荷は夥しいものだった。

「早いなあ。……一船ごとに見違えるばかりな繁昌だ」

滑川の河口に横づけになっている奥州通いの船に立って、こうつぶやいている男がある。

「おうい、行ってくるぞ。おれは鶴ヶ岡へ海上の祈願にだが、おまえ達は、いずれ化粧坂だろう。悪酒をすごすなよ」

五十をこえていよう。身なりばかりでなく、人間としてもでき上がっているという感じのする人物である。

金売の吉次だった。

吉次は、その日、頼朝が納涼のために、三浦義連のやしきへ招かれてゆくという事を聞いたので、急に、その行列を見るというよりは――頼朝に随身の諸将のうちに、きっと九郎義経もいるであろうと思い、

「よそながら一目」

と、思い立って出かけたのであった。

稲瀬の松並木まで来て待っていると、毛利冠者頼隆が先に、その後から頼朝が騎馬で大勢の武者につつまれて来た。