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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
六
遠くから望むとなおさら心細い小人数に思われた。――この少数な人影が、一世を覆す原動力になり得ようなどとは、考えられない事だった。恐らく、頼朝自身でも、常識としては、そうあったに違いない。
六
時政は、自分が兵の先に立って、館を立つ前に、
「あいにく今日は、三島明神の祭日ゆえ、大路を進めば、往来の者の目にふれて、逸はやく敵方へ知れよう。――蛭ヶ島の間道を迂回して襲せてはどうであろう」
と、案じて、頼朝や子息たちに計ったが、誰もみな、
「大事の一歩から、裏道づたいはおもしろくない。大道を堂々行こう」
と、いうに一致したので、
「さらば」
と一気に、まだ宵の街道を山之木郷へさして駈けたのであった。
途中、肥田原まで来ると、時政は馬上から定綱をふり向いて、
「山木判官の後見、堤権守信遠は、山木家の北山に居を構えておるが、その信遠は、勇猛な聞えのある男ではあるし、旁、この小勢では、一方攻めしているまに包まれる惧れもある。御辺の兄弟たちは、力を協せて、その信遠の住居へ向え」
と、いいつけた。
定綱の兄弟たちは、
「心得た」
と、わずかな別軍をひきいて牛鍬から道を曲った。