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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

とか、

「子は連れておるか」

とか、また、

「窶れておるか」

などと侍側の家臣や、折々見える問罪所の奉行へ、諄いほど訊ねた。

問罪所からは、やがて彼女を取調べたつぶさな口書に、その処分を仰ぐの旨を添えて、一般の罪囚と同じ形式で、清盛の所へまわしてよこした。

すると、清盛は、奉行の仕方をひどく不機嫌に、

「かりそめにも、義朝の想い女。乳のみ児すらあるものを、問罪所の牢などにおかず、なぜ侍どもの一部屋なり空けてやらぬか」

と、その無情を詰って、

「わしが調べる。西の屋で見よう。すぐ曳いて来い」

と、意外なことばだった。

奉行は、その前に、頼朝に対する清盛の仮借ない気もちをそれとなく聞いていたので、常磐に対しては、なおさら主人の旨にかなうように苛烈に扱ったのであったが、案に相違したので非常に狼狽し、やがて彼女を館の下屋まで召つれて来た折には、客を伴うように、宥わり慰めた。

「席を与えい」

清盛のことばに、侍が、階下の庭さきへ藺筵を展べかけると、

「上へ。上でよい」

と、早口に云った。

――上とは? と疑うように清盛の顔を仰ぐと、階の上の広縁を顎でさしているので、奉行は、