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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

堂の上には、北条時政と、牧の方としかいなかった。縁にいた次男の義時が、母によばれて、母と共に、頼朝が具足をつけるのを、側から共に介添した。

「…………」

時政は、一方にあって、さっきから黙然と、外の頭数のみかぞえていた。彼の予定していた人数よりも、思いのほか集まりが尠ない――という顔いろに見えた。

三

わけて、今朝の勢揃いには、必ず見えていなければならない顔が見えない。時政は、それを密かに憂えていた。

佐々木太郎定綱を頭として、次郎経高、三郎盛綱、四郎高綱の四人の兄弟である。

いや、四人の数はともあれ、彼等の不参は、その父とか、養父とか、姉聟とか、従兄弟とかいう、相模国の一方の勢力が、早くも、旗挙げに先立って、離反を表示しているのではなかろうか?

そう時政は懸念されてならないのである。

渋谷庄司重国といい、大庭景親といい、どっちかといえば、源氏方より平家に縁の濃い者たちである。ただ佐々木兄弟の父秀義だけが、近江源氏の血を今も頑固に誇っている老人だが、これは平治の乱に、近江を追われて相模へ移住して来て以来、ずっと渋谷庄司の世話になっている関係から、その一族には、叛けない義理あいがある。