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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
五
――それらの事も弁えて物を申せよ。政子の吾ままや、お前たちの若い考えを、余り云い張られては困るのだ。よいか、わかったか」
五
語ろうとする前に、父にそう釘を打たれてしまうと、宗時は、何も云えなくなってしまった。
若い情熱と純潔をもって、ひそかに誇っている彼は、父の時政が、何をするにも――わが娘の結婚を考えるにさえ――すぐ閥族の勢力扶植へ持って行ったり、政策の具にしたがるのが、不快でならなかった。そしてその反動は、いつも妹への同情となった。
さっき、山木判官の人物を、俗才に長けた官僚臭の男――といったのは、多少、父へもあてつけて云ったのであるが、時政は、策の多い自己の性格が、自己の人格を少しでも下劣にしているなどとは、毛頭思ってもいないふうであった。
むしろ、そういう風に、心をくだいていることが、親の愛であるとしているかの如くに見えた。
「宗時。……口を噤んだまま、何を、気に入らぬ顔しておるか」
「でも、今のおことばは、もはや私が、何を申す余地もありませんから」
「然らば、わしが取結んだ縁談を、そちまでも、不承知というか」
「私が嫁ぐわけではありませんから、私に異存はあろう筈もございません。