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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

二

「何たる手ぬるさ」

と、山木方でも、勿論、諸所へ手勢を放って、血眼になっている。わけて、臭いとにらんでいる蛭ヶ小島附近には、道々へ昼夜、見張をしのばせて、そこの人出入りを窺っていた。

すると、三月になって。

伊東入道祐親から、山木兼隆へ一書をよこした。それには、政子のかくれた先が、明らかに書いてあった。

二

伊東入道からそっと報らせてよこした書面によると、

(政子は、伊豆山権現の一院に匿われている。元より北条一家も承知のうえと思う。婚礼の当夜働いた狼藉者は、ふだん頼朝の配所にあつまる近郷の不良の徒と考えられる)

と、あり、なおまた、

(頼朝という流人は、困った男である。前には、わが家のむすめも彼にたばかられ、今また、貴家の花嫁を奪う。言語道断である。彼のごときを生かしておいては、伊豆の平和は保たれない。よろしく六波羅へ罪状を訴え、一方、伊豆山権現へ兵を上されよ。日頃の誼みなれば、熱海口は、自分の手でうけ持って、ふたりを遁さぬように備えておこう)

とも誌してあった。

文面によると、伊豆山には、逃亡した政子ばかりでなく、頼朝もそこへ移って、同棲しているらしく思われたので、