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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
二
それが政治的な葛藤を持ったりして、平家と戦うから、前の保元の時でも、ことしの平治の乱でも、手もなく敗れてしまったのだ。信西入道などから見たら義朝などはお人のよい乗せ易い人物だろうし、いわんや六波羅殿と比較したら、武力では知らぬ事、政治的な頭のほうでは、較べ者になりはしない」
平家源氏を問わず、ゆめ、うわさ話をしてはならぬ。また、大臣や長者を呼ぶに、たとえ誰が聞いていなくても、よび捨てにする法はない。謹むべき生意気沙汰であると、常々かたく学頭から訓戒されているが、若い同士が集まると、いつかそんな事は忘れていた。
「……おや?」
そのうちに一名がふと、聞き耳を欹てて、遠心的な眼をうつつにした。誰も彼も急に口をつぐんで夜寒の壁を見まわした。どこかで嬰児の泣き声が遠くしていた。
二
嬰児の声は、黎明の声である。きょうは闇世でも、明日のある永遠の人の中へ告げている声である。
だが。
深夜ではあるし、女人はいない筈の寺院だけに、その泣き声は、妙に若い学僧たちを懐疑させた。
嬰児を怪しむのではなく、当然それに附随している筈の者を、すぐ臆測にのぼせて、種々な疑いを描き、