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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

それが、源氏のほうからも、豆粒のように、点々と見えた。

吉浜村へ出る谷間道を隔てて、平家方は、星山の峰つづき一帯を陣地として、翩翻と、旌旗をたてならべた。遠目にも白く燦くのは、その間を歩く長刀や太刀などであろう。また、兜の前立だとか鎧の金具なども、朝陽に映えて、どうかすると、星雲のように煙った。

その陣地は、幾つにもわかれていて、東国に住む平家方として、名ある大将が、それぞれ一族郎党をひきつれ、ここへ会して、

「叛乱の不平分子ども。何ほどの事があろう」

と、ひかえていた。

まず、相模の住人大庭三郎景親とか、河村三郎義秀、渋谷庄司重国、糟谷権守盛久などは、その旗頭格といってよい。

曾我太郎祐信。

滝口三郎経俊。

長尾新五郎為宗。同じく新六定景――といったような侍たちの中には、俣野五郎景久とか、熊谷二郎直実などという豪の者も、羽搏く前の鷲のように、じっと佇んで、谷ひとつ彼方の敵を見つめていた。

「大庭景親どのの兄、景義とかは、頼朝との誓い、とりわけ深く、こんども叛軍のうちにおるそうだが、骨肉同士が、こう谷を隔てて、敵味方と対いあう心地はどんなであろうか。