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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

二

さすが、別れを傷む新妻らしい眸が見えた。頼朝は、凛として頷いた。

「そうだ。共にむかい馴れた膳部も、けさが当分のわかれ。……武運つたなくば、最後のものとなるかも知れない。楽しんでいただこう」

二

政子のすがたが、配所に見えなくなった頃から、配所の人出入りは急に活溌になった。しかも夜中の往来が多かった。

例の、北条家の総領の宗時をはじめ、佐奈田余一、天野遠景、仁田忠常、大庭景親兄弟などの若い仲間が、入れ代り立ちかわり、生き生きした面をもって大股にあるいて出入りする姿が、この附近の道でよく見かけられた。

北条時政も、時折見えた。

もとより、彼の行動は、この地方では大きな目標となるので、いつも微行ではあったが。

わけて、めずらしい客は、渋谷庄司重国などが、老躯を運んで見えたことである。

――長年、ここの配所に仕えている佐々木定綱の弟の経高を、こんど養子に入れたので、その挨拶に――という事であったが、

「いつのまにか、世も移ったのう。何せい、若い者の時勢じゃよ。夏が来れば、夏が来るのを、人間の誰が遮られるものではない。相模ももうそろそろ夏が近うてな、生き生きと若い新樹が山野に伸びておる。