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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
五
と、土肥実平以下、眼を見あわせて、しばしは、疑いに囚われていた。
自分たち若人輩の秘かな企ては、父もうすうすは感づいている筈と、宗時も警戒はしていた。しかし、それは日頃の事である。今夜の事に限っては、いくら炯眼な父でも、知るわけはない。絶対にないとしか、宗時には思われなかった。
で、しきりと不安がる友へ、
「いや、偶然だ。父はただ近郷の土豪とか、万一とかいう、漠然たる要心のために、兵の配備を命じたにちがいない。さもなくば、誰よりも先に、密謀の張本人たるこの宗時を、監禁なさらなければならない筈だから」
信じるまま云った。
宗時はまた、ことばを重ね、
「たとえ山木判官や父が多少感づいておろうとも、この期になって、策を変えるわけにはゆかん。飽くまで、所信を押し通すまでのことだ。間違うたにもせよ、そこ此処に、二百余りの兵はある。遮二無二、かねての手筈をたがえず事を運んでくれい」
と、激励した。
一同の惧るるところは、自分等の危険よりも、宗時と父時政とが、正面を切って衝突となった場合にあったが、宗時の口からそう聞くと、
「よし。宗時殿さえ、そのお覚悟ならば、われわれの躊躇うている理由はない。