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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

……ああいう魔性な事をして欣ぶのは、天狗たちのよくやる事でございますよ」

「わしも、里の人々も、天狗の業と、信じてはいるが」

「六波羅衆としますれば、真の天狗は打ち取れなかったとありましては、時めく太政入道殿のご威勢にかかわりますから、山樵や猟師などの、山男にひとしい土民の首を梟けて天狗じゃと触れたものでございましょう」

「なるほどな。お許は、奥州人というが、案外な智者ではある。そのとおりにちがいあるまいて」

「時に……神主さま」

「なんじゃな」

「このたびは少々、お願いの儀がござりますが、おきき下さいましょうか」

「ほ。……わしへ頼みとは」

「京へ参る道中で大勢の仲間の者が、ちと面倒な争い事を起しましてな、うるさくてかないません。半月ほど、ここに避けて、旁、ちと養生していたいと存じますが、どこか空いている一間をお貸しくださいますか」

三

三年ごしの計画だった。いつも難しい大きな商法に運を賭けて、それに打克って来た自分の商才を以てすれば、こんどの計画も、気は長いようだが、そう困難ではないと、彼は信じていた。

それも、念には念を入れてと、十分、後々の問題まで考慮して、おととし奥州平泉へ帰国して後、何かと商法上の用命をうけて、扶持人同様に出入りしている藤原秀衡の側臣を通じ、ひそかに、自分の計画をはなしてみたところ、