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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
兄と弟
一
日頃の軽薄は、あたりまえであった」
「あはははは」
「わははは」
遊女たちの話で、平家方の大将たちが先になって、水禽の羽音と共に逃げ出したという始末がわかった。
また、大地を見まわせば、種々な食器やら、楽器やら、化粧道具の類まで、およそ贅沢な日常用品で落ちていない物はないほどであった。
兄と弟
一
その日、黄瀬川の宿駅には、何万という兵馬が屯した。もちろん宿中にそんな人員が泊りきれるわけではない。頼朝の宿舎を中心として、畑にも野にも河原にも、それぞれ陣を分っていたのである。
富士川の帰りであった。
一戦も交じえずに、京へさして敗退した平維盛、忠度などを追撃して、
「このまま攻め上ろう!」
とは、その折の当然な頼朝の意気ぐみであったが、
「いや、ここが大事でしょう。まだ東国は源氏一色となったわけではありません。まず、一応お味方も鎌倉へ退いて、徐ろに、地盤を固める必要がある」
と、説いたのは、さすがに東国の事情に精通している広常や常胤などの老巧であった。
「……そうか」
頼朝は、自身へ考慮の間を与えて、口をつぐんだ。
彼は老人の言にはいつも一応の考慮は払う。常に、老人の意志など無視して若い意力のまま前進しているかのようであるが、