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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

三

「おや。居眠っていやがる」

かえって三人は躊躇った。

しかし、姿がゆるさない。忽然と下界へ墜ちて来た一つの星みたいに見えた。それが、「源太ヶ産衣」や「髯切」の燦爛とは知るよしもなかったが、何しろどこか粧装が違う。

これだ。由々しい出世のつると云われたのは。春の跫音もこれに出会う虫の知らせだ。――のがすな、ぬかるな。――眼くばせし合って、まず源内から雪の山を躍りこえて往来へ飛び出た。

「待てっ、公達」

「…………」

右兵衛佐頼朝は、がくと、愕いたように振向いた。

三

見つけない男が、竹槍を向けて何か云った。他にも、長柄刀を持ったのが二人ほど、自分のほうを睨んでいる。

さすがに、遠くからである。うかと、近づいては来ないのだ。頼朝は、

「なにか」

とも云わなかった。

怖いという気もそうしない。槍や長柄刀は血ぬられたのを飽きるほど戦場で見たばかりだからである。それを下人ずれが持って踏ン張ってなどいても、蟷螂のようにしか見えなかった。

「御曹司、耳はないのか」

「…………」

「いずれから来て、いずれへ渡らせられる。無用な事。この先とも、遁れる道などはない。――粥なと食わそう、馬を降り召され」