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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
八
いつもその帰りには、黄瀬川の宿などで遊びに更かすのも常だったから、館に居合せた郎党はいくらの数でもなかった。
攻め矢、防ぎ矢、双方から射る矢うなりの一瞬がやむと、ばらばらと石などが投げこまれ、続いて門扉を打ち壊す音やら、土塀をこえて躍り入る兵の影やら、邸のうちはたちまち死闘の渦に巻きこまれた。
そこへ。
北山の方面から、堤信遠を討ちとめた佐々木定綱や経高の兄弟が、信遠の首を刃の先に刺しつらぬいて、
「討った。討った」
「信遠を討ち取ったっ」
と、口々にさけびながら、ここへ加勢に駈けて来たので、寄手の指揮をしていた時政は、
「北山は、はや陥ちたぞ。味方の幸先はいいぞ。山木兼隆を討ちもらすな。塀まわりへ気をくばられよ」
と、声を嗄らしていた。
甲冑の兵に追いつつまれながら、死にもの狂いに、逃げ、踏みとどまり、また逃げ走っては、また戦いして、夜叉の姿になっていた山木判官は、時政のその声音に、愕然、血ばしった眼をさまよわせたが、
「おッっ? ――その声は」
と、時政のほうへ向って、まっしぐらに、大長刀をひっ提げて駈けて来た。
そして、刮と、大きな眼を、そこにいた人影に向けて、