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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
「何ですかじゃあないっ。おまえ達は、阿闍梨さまのお次に大人しく控えていて、ご用を承らなければいけないじゃないか」
「阿闍梨さまのお部屋へ今、都のお客さまがお見えになって、わたし達がお次にいたら、うるさいからしばらく遠くへ行っておれと仰っしゃいました。それで、みんなして遊んでたんです」
「遮那。貴さまはもう十六ではないか、稚子の中の年がしらなのに、何だそのだらしのない恰好は。襟元を直さんか」
「はい」
「阿闍梨さまに、ご内談があって退っておれと云われたら、お次から遠く隔てた廊へでも出て、控えておればよいのだ。遮那など年上のくせに、心得ぬはずはない。――お山の祭りはおまえ達のためにあるのではないぞ」
「わかりました」
叱言は、云う方も、云われるほうも、馴れ過ぎている。牛若は、稚子の仲間をふり向いて、
「あっちへ行こう」
指さして、どかどかと駈け去ろうとするとまた法師が後ろで、
「駈けたらいかんと云うのに分らんかっ。静かに歩け」
と怒った。
首をちぢめて、稚子達は、そろそろと廻廊を曲がって行った。
そこを曲がると、観音院と僧正坊の伽藍が広庭を抱いていた。
観音院の縁さきには、太い青竹が幾束も積んである。