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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

二

郷土の若人輩が束になって説いたところで、若い、と一笑されるに過ぎないであろう。

が、子には甘い時政、わけて政子には目のない親だった。政子と佐殿との間に、二世の契りが生じれば、嫌応なく、平家へ反いて起ち上がりもしようかと、彼の総領宗時を始め若い群は考えて、配所と北条との通い路を、密かに守って来たものだった。

二

二世までとも見えた政子と頼朝との誓紙が破られた。政子は、近いうちに、山木判官に嫁ぐという。

――捨てて置くのか。

当然、騒ぎ出したのは、この若い群だった。問題は、佐殿の恋愛沙汰ではない。佐殿は元より浮気者だ。そんな事を歯牙にかけているのではない。

――大事の破綻だ。

――政子どのは、われわれの企てを知ってもいるし。

――目代の妻となれば。

と、当然な杞憂と憤りから発した狼狽であった。

宗時は、個々に訪ねて、今一度、妹と佐殿と会わせた上で、真実を闡明する。もし飽くまで妹の変心であったなら、必ず妹の首級を以て各※(二の字点、1-2-22)へ非を詫びよう。

そう宥め廻って、辛くも、この数日を事なく過して来た今日の会合であるが――宗時は今、政子の首を持って来てはいなかった。