轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

彼を大胆とか不敵とか世の知らぬ人は云っているが、事実は小心といったほうが当っている。激発しそうな感情が抑えきれなくなると、身を揺るがすのである。――重盛などは生前よくそれをたしなめて、

(太政入道ともお成りあそばしたら、むかしの貧乏ゆすりの癖はおやめなさい)

と、注意したものであるが、彼の持前は死ぬまで止みそうもない。そして額から頭にかけて、膨れた血管が露わに見えてくる程になると、もう坐ってもいられなくなるらしい。褥を立って室のまわりを歩きはじめる。

もっともその憤りも、落雷のように怒発してしまえば後はさっぱり気も霽れる性であるが、彼とても理性はある。いやその位置の重い人だけに、人いちばい自分の激発が呼ぶ結果もよく弁えていた。

今もそうである。

彼は、面上一杯な憤懣を、紛らわす気か、鎮めるつもりで、廊へ出たり、欄へ立ったりしていたが、次第にその姿は、檻の中をめぐる猛獣にも似て来て、呻いたり、首をあげたり、ぐるぐる廻ったり、傍目にはまるでおかしいような狂態を現わして来た。と思ううちに、彼は、

「おらぬかっ。宗盛っ。――宗盛っ」

と、近くの室にいる侍たちは、胆をつぶして度を失うほどな大声で彼方へどなっていた。