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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
――人よりも、その革新精神の旗じるしにあった。
「あっ。こうしていると、またさっきのような重囲に陥ちそうです。矢が集まって来ました。もう少し、お怺え下さい」
五郎はふたたび頼朝を扶け励ましながら、椙山谷ふかく逃げこんだ。
明くれば、二十四日。
追々と、彼の所在を知って、味方が集まって来たので、頼朝は、後ろの峰へ上って、陣を立て直そうと云う。
元より否やはない。
「きょうこそ、きのうの雪辱を」
と、面々の意気は、すこしも挫けていないのみか、むしろ旺んだった。お互いが、暗黙のうちに、こう顔を見合うのも、今の一瞬が最期か、きょう半日の間かと、散るのをいともさり気なく戦いでいる桜の花のように、あっさり心のうちで袂別を告げていた。そこに、悲壮というような血臭いものもない程、潔かった。
「登れ」
「登れっ」
天上へでもさして行くように、人は峰の肌につかまって攀じ出した。
すると、敵の大庭景親以下、三千余騎が喊の声をあげて迫って来た。
まだ、布陣の整わないうちであったため、またしても、源氏の勢は、個々に力を分散して戦うほかなかった。
それでも、加藤次景廉や大見平太等は、