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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
二
「奥方。佐殿の奥方。走り湯権現の覚明でござる。それへはいりかねまするで、垣近くまでお顔をおかし下さい。――戦場の模様、その後の人々のご消息、いろいろ、探り聞いて参りました」
折ふし、垣の外からまた、そう小声で告げる者があった。
二
ゆうべは、牧場の妻や、走り湯権現の覚明からの報告。――またきょうも、政子の許へは、種々な人たちが出入りして、戦後の模様を、何くれとなく知らせて来た。
それらの帰結は、各※(二の字点、1-2-22)、人と場所とを異にするが、今仮に、情報を綜合して並べてみると、およそ次のような幾つかの断片的な話となる。
*
有力な源氏の味方と期待されていた三浦義澄の一族は、かんじんな石橋山の戦いに間に合わず、丸子河から由比ヶ浜方面へ出たところ、平家方の畠山重忠の軍と行き遭い、重忠方は郎党五十余人の首を失って退却し、三浦一族も、多くの負傷や死者を出して退きわかれ、三浦郷へ帰って、衣笠城の孤塁を固めているが、そこへもまた、畠山重忠を始め、河越太郎重頼、江戸太郎重長などの平家勢が、ふたたび大挙して、包囲に向っているというから、到底、長くは支えきれそうにも思われない。