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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

と、詰問り寄って彼の真意を打叩いた。

広常は首を振って、

「いやそうではない。わしは今日という今日ほど胆を潰された例はこの年までまだ覚えぬことだった。――で、真実、あの殿には、頭が下がったのじゃ。そち達も、以後二心なく、あの殿をもり立てて行ったがいい」

そして彼はなお、次のように自分の観るところと、一つの例を、一族の後進のために説いて聞かせた。

天慶のむかし、この東国で平将門が乱を起した時、人のわるい藤原秀郷は、わざと彼の人物を視てやろうと、加勢と偽って会いに行った。

すると将門は歓びの余り、結びかけていた髪のむすびも結びあえず、冠をつけて客座に出て来た。その様子の軽率なのに、秀郷は、愛想をつかして戻って来たということが云い伝えられている。

それに反して。

頼朝のきょうの態度は、見上げたものと云っていい。今、天下は平相国の領地でないところはなく、平家の与党の住まぬ地は一郷一村とてない程なのに、一流人から起って、わずか三十余日、麾下の武者とて五、六百の小勢に過ぎぬ微弱を以て、この広常が、二万の大兵をひきつれて加担に罷り出たとあれば、将門が秀郷を迎えたよりは、大歓びに歓ぶかと思いのほか、