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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

坂東の原野と山川が人間のなかに育んだ太いすじ骨というものであろう。鎌倉の新府には今、その骨太い性格の持主ばかりが、何万となくひとつに住んで、事ごとに搏撃しあっていた。喧嘩を気にかけていては、一兵卒でも、今の鎌倉には、一日も住んでいられないほど、剛毅と剛健のよりあいなのである。

「ここは、和殿の父、大介義明のやしきであったか」

義連の亭にくつろぐと、頼朝は機嫌よく、酒を酌みながら、当日の主にたずねた。

岡崎四郎義実は、ひどく酔っていた。酔うて若者のようにはしゃぐ老人で、

「殿の召されてお在す水干を、義実に賜わりませ」

などと云い出した。

頼朝は、笑って、

「これが欲しいか」

と、脱いで、投げ与えた。

「かたじけのうござる。どうじゃ、どうじゃ、身の面目は」

義実は、子どものように、すぐそれを着て、威張って見せた。

四

岡崎四郎義実は、さっそく拝領の水干を、上に着こんで、

「あら冥加。――どうだ方々。どんなものだ」

と、子どものように、左右の袖をひろげて、吾儘のかなった身の面目を、座中へ向って自慢した。

するとまた、上総介広常が、その口真似をするように、

「あら勿体なや。