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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页

青空文庫

眼もくらむばかりとは、その一人一人の装いであった。――が吉次の眼には、その金銀の飾りも絢爛な織物も、太刀の鞘や沓に光っている漆も、みな自分の生産した物を、自分で拝んでいるような気がした。

あたりの人々を見れば皆、なみだを流さぬばかり心から平伏している。自分のような考え方は不幸であると思ってみても、にわかに随喜のなみだも出なかったが、そのうちに、

「……あっ?」

あやうく声を嚥みながら、ばっと面に血のいろをうごかした。

すぐ前を、九郎御曹子が――久しく見ないので見違えるばかり成人したその人が――いつぞやの継信、忠信のふたりをつれて通った。

二

義経はちらと、吉次のほうを見たようであった。

慥かに、自分へそそがれたと思った眼に、吉次が、はっとしているまに、もうその人は背を見せて、彼方へ歩いていた。

「……ああ、お立派になった」

彼は、眼がしらに、熱いものをたたえた。

――何か、安心した気もちと、自分から遠くなったと思うさびしさにつつまれた。

「物」と「金」しか頭にないかのような彼も、義経にだけは、愚かしいほど、情に揺りうごかされた。――子のないせいかとも思っている。