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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
「何せい、ご不愍なことだ。何とかお命を助けておあげ申したいが」
密かに宗清は苦慮していた。いや、思案ばかりでなく、そのよい相談相手として、自分の主人尾張守頼盛の母公にもあたれば、また清盛の義母にもあたるちょうどいい手づるの御方として――池の禅尼へも内密に縋っている。
禅尼は大の仏教信者だし、それに慈悲ぶかいお人とはかねがね聞き及んでいるので、数日前に主人の消息を携えがてら伺って、あれこれと、頼朝のうわさを持ち出すと、禅尼には、
(あわれな者よの)
と、涙さえうかべ、
(起臥の様はどうじゃ。気だてはどうか)
と、それからそれへと聞きたがるので、宗清は自分の思いのまま話すと、
(そうか)
と、深く息しておられた。
するとその翌日、日ごとに詣る寺院の帰り途とかで、ふいに子の頼盛が留守屋敷に立ち寄った。
元より公ではないが、そっと頼朝をご覧になった。そして頼朝へ菓子など与えて帰られた。
(この尼が、十七年前に亡うた子の右馬助家盛に、頼朝は瓜二つともいいたいほどよう似ておる。右馬助がもし生きてありなばと、そぞろ思い出されて、涙がこぼれてならなんだ)
とはその後、宗清が泉殿へ伺った時の禅尼の述懐であったが、さらに、