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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
「朝日新聞」1940(昭和15)年1月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 页
そんな茶のみばなしではない。深く、ゆうべわしは考えてみたのだ。その信西入道の仕方と、世上の反響やその結果をな。……と、良くないわい。下策だ。人心をつかむ所以でない。これを義朝一族の後始末に照らしてみるとだ」
「ホ……」
重盛は微笑をたたえ、ついうかと――お気づきになりましたか――と云いかけたが、父の性格は、他の忠言でするのを好まない。たとえ他の忠言で行うにも、一応、自分の考慮と意思から出たものとしなければ実行しない――その性癖を知っているので、
「御意のとおりです。まったく、お考えは図に中っておりまする」
と、相槌を打った。
すると、清盛は、
「そうか。和郎にもそう考えるか。大を為さんとすれば、よろしく仁を施さねばならぬ。――幼い頼朝ごとき者、打首にしても、世上に眉をひそめさせるだけだ。一命は助けてとらそう。流罪申しつけろ」
「……えっ。では」
むしろその恬淡さに、重盛のほうが抜駈けされたような心地だった。父の顔はそれを云ってしまうと、さばさばと朝らしい照りを顔脂に見せているのだった。
「大慈悲心を起されました。禅尼にもそれを聞かれたら、どんなにお欣び遊ばすかしれません。