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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

03 日光の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页

青空文庫

左膳はあのとおり、すぐ恢復いたしたが、おれは濁水を飲んだのがあたったとみえて、いまだにこのありさまとは、われながら情けない」

身もだえする源三郎のようすに、お露は美しい眉をひそめて寄りそい、

「すこしおみ足でもおさすりいたしましょうか。マア、そんなにおじれにならずに、ゆっくり御養生あそばしますように――」

「こんどというこんどは、おれも、人の情けが身にしみた。あの左膳……本来なら敵味方、おれにかまわずにどこへでも行ってくれと、毎日頼むように言うのだが、このおれが達者になるのを見すますまでは、どんなことがあってもわしのそばを離れぬと言う。そして、お露どのもごらんのとおり、あの、かゆいところへ手のとどくような左膳の看護じゃ。男を泣かすのは男の友情だということを、わしはこんどはじめて、つくづくと知ったよ」

左膳のことばかり言われるのがお露には、少女らしい胸に、不服なのか、

「はい。ほんとうに……」

と言ったきり、うつむいている。源三郎も、すぐその心中に気がついた体で、

「ハハハハハ、左膳ばかりではない。親爺六兵衛殿といい、イヤ、誰よりもお露さんの親切、生涯胆に銘じて忘れはいたさぬ」