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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
「そんなお義理のようなお礼など――」
お露は、ちょっとすねて。
「それよりも、どうぞいつまでも……いつまでも御病気のまま、アノ、あまり早くよくおなりにならないように――」
「これは異なことを、いつまでも病気でおれとは――」
「でも御病気なればこそ、このむさくるしいあばら屋においであそばして、わたくしのような者まで、朝夕お側近くお世話させていただいておりますが、おなおりになれば、りっぱな御殿へお帰りあそばして、美しい奥方をはじめ、大勢の腰元衆に取りかこまれ……」
パッと顔をかくしたお露の耳は、火のように赤い。それよりもまごついたのは源三郎で、自分が伊賀の柳生源三郎ということは、知らしてない、どこの何者とも身分をつつんでいるのですから、
「何を言わるる。私はそんな者ではない。左膳と同じ、御家人くずれのやくざ侍……」
「それならば、なお心配で。江戸には、美しい娘さんが、たくさんいなさるとのこと――」
「しかし、お露さんほどきれいなのは、そうたんとはあるまいテ」
と源三郎、意識して言うわけではありませんが、ふと、こんな言葉が口を出るのが、そこがソレ、女にかけて不良青年たる源三郎のゆえんでありましょう。