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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
03 日光の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,229 字 · 389 页
女難に重なる女難に、源三郎は、その切れのながい眼をパチクリさせて、かたわらにすわっている左膳をかえりみ、
「これはいったいなんとしたのだ、左膳」
「ワハハハハハ、おれがいたとて、遠慮は無用だ。だきつくなり、手を取るなりするがよい。それとも、こんな化け物でも、人間のはしくれであってみれば、人前でイチャツクことはできねえと言うのなら、おらア、ドロドロと消えるとしよう。アッハッハッハ」
豪快な笑いの底に流れる、身を切るような一抹の哀愁……源三郎も萩乃も、それに気のつくすべのないのは、やむをえないが。
左膳が、火のように恋している萩乃は、いま、死んだと思ったすきな男を眼の前にして、この、狂気のような喜びようである。それを見ていなければならない左膳の苦悩は、煮えたぎる鉛の沼。
剣魔左膳の恋は、誰も知らない。誰も知らない。病犬のように痩せほそった左膳の肋骨の奥と、膝わきに引きつけた妖刀濡れ燕のほかは。
どうして萩乃がここへ――。
と、源三郎は、なおも不審顔です。
左膳の一眼、萩乃と源三郎をかたみに見ながら、
「おれは今朝、源三にだまってブラリとここを出たが、あの足ですぐ妻恋坂の道場へ行ってみると、何やら今夜儀式があるとかで、屋敷じゅうざわめいているじゃねえか。